遊女(あそびめ)の実態

吉原遊郭の遊女(明治時代)

時代劇などでよく現れる遊女。
だが、その実態は、悲惨の一言だった。

 幕府は人身売買を禁止していたため、吉原(江戸の公娼施設)の遊女は10年間の年季奉公という建前が取られていた。

そのため、27歳になれば等しく自由の身になれたとの説が広まっている。

しかし、実際は借金が棒引きになるわけもなく、下級の見世へ転売されていた。

花魁などの高級遊女も、時代が下がると共に人気がなくなり、価値は下落した。

たまに客が派手に豪遊したとしても、代金は殆どが見世の懐に入り、借金の返済に充てられた分はごく僅かだった。

そのうえ高位になればなるほど、衣装や調度品などの出費を強いられるという境遇であった。

遊女とは もともと奈良・平安時代の神や仏を称える踊り子や歌い手の女性たちを指していた。

あくまでも遊芸の付属物として、一部性行為があったらしいが、鎌倉、室町時代になると、そこから分化する形で専門家集団としての遊女が確立される。

彼女らは宿場や港町で春をひさいでいた。

1584年(天正13年)豊臣秀吉によって遊女は強制的に今の大阪の道頓堀川北岸に集められる。ここに作られたものが遊郭の始まりである。

5年後の天正17年(1589年)には京都柳町に、江戸には1612年(慶長17年)、日本橋人形町付近に吉原遊廓が設けられた。

このように公的に取り締まられた遊女だが、1600年台より旅籠などが発達して旅行が一般的になったため、各宿場にも奉公人という名目で飯盛女と呼ばれる私娼が自然発生していた。

江戸中期になると、宿駅は客集めの目玉として飯盛女の黙認を再三幕府に求めている。

遊女はよっぽどの上妓でない限り客を選べず、常に性病、妊娠に悩まされていた。

なお、食事代を払っても中抜きされ、与えられる食事は少量なので、自腹を切って惣菜を買ったり、客にねだって飢えを満たしていた。

遊郭に長く勤めるとそれだけ性病に罹る確率も高く、梅毒にかかって鼻が欠けたり、体が弱って商品価値がなくなれば、あとは放置された。

大商人や大名などがご贔屓にしてくれる遊女はほんの一握りであり、そのままでは楼閣の外に出ることが出来なかった為、さまざまな技法を駆使して客を引きとめようとした。

これが手練手管の語源である。

語源が遊郭の言葉や単語はたくさんある。「ありんす」「ざます」だけでなく、株式の「寄り付き」「大引け」「ザラバ」などは遊郭が発祥の名詞でそれぞれいみがあり、趣深い。

江戸時代の吉原では、特に上級遊女はただの娼婦ではなく、ファッションリーダーとしての側面を持っていた。

それでは、当時の女性がアイドルを目指すかのように身売りしたのかと言えば、そんなことはない。

大部分は貧困や家族の犠牲となって苦界へ追いやられたのが現実である。

明治以降に純潔思想のせいで娼婦への蔑視が強化されたとして江戸時代を評価する声もある。

しかし、江戸時代は遊女の美化は盛んだったが、彼女らを現実的に救おうとの意識は希薄だった。

遊女への折檻は日常茶飯事であった。

「食事を与えない」、「寝かせない」は甘いうち、目立つ傷が付かない小刀針を用いたり、蚊攻めや水責めにして呼吸を塞ぐなどもあった。(歌舞伎『助六縁江戸桜』に登場)

江戸時代に遊郭に押し込められた「遊女」は、その大多数が中下級の遊女だったため、待遇は劣悪だった。

遊郭の周囲には、お歯黒溝(どぶ)と呼ばれる堀が巡らされ、外界から隔絶されていたため、溝(どぶ)を超えて脱走しようものなら、楼主や遣り手の折檻が行われていたのだ。

また、困窮から盗みを働くなどすれば、殺してもいい、ということになり、逆さ吊りにして回転させ、竹棒で滅多打ちにする「ぶりぶり」などの私刑が加えられ、そのまま死ぬものも多数いた。

三ノ輪の浄閑寺は、かつての遊女の共同墓地である。

死亡時の平均年齢は22歳で数千人が眠っているという常識では考えられない浄閑寺のデータを見ると、当時いかに遊女の折檻死が多かったか、容易に判断できる。

 ゆびきりげんまん うそついたら はりせんぼんのます ゆびきった

遊女の唄を見る

  1. 指切り
  2. げんまん針千本
  3. 遊女と小指

遊女たちは、厳格な規律に縛られていた。

遊郭の規律を見る

  1. 遊女の掟
  2. 折檻執行人
  3. 特殊な治安体制

堀江遊郭六人斬

「商品に手を出してはいけない」
それが商売人の鉄則なのだが・・。

堀江遊郭六人斬を見る

  1. 事件概要
  2. 凶行に到るまで
  3. 未明の惨劇
  4. 大石順教尼として

もくじ

  1. 遊女(あそびめ)の実態
    1. 人身売買の境遇
    2. 遊郭と遊女(あそびめ)の歴史
    3. 遊女の暮らし
    4. 遊女の美化
    5. 遊女への折檻
    6. 遊女の唄
      1. 指切り
      2. げんまん針千本
      3. 遊女と小指
    7. 遊郭の規律
      1. 遊女の掟
      2. 折檻執行人
      3. 特殊な治安体制
    8. 堀江遊郭六人斬
      1. 事件概要
      2. 凶行に到るまで
      3. 未明の惨劇
      4. 大石順教尼として
  2. 長田忠致の土八付
    1. 長田親子と土八付
    2. 長田父子の裏切り
    3. 頼朝の策謀
  3. 花山院奉射事件(長徳の変)
    1. 花山法皇暗殺未遂
    2. 法王と伊周、恋愛トラブル
    3. 藤原道長と伊周の政争
    4. 藤原伊周・隆家の処分
  4. 兄殺しの日本武尊
    1. ヤマトタケルの気性の荒さ
    2. 建(タケル)は敵から献上された名
    3. 草薙(くさなぎ)の剣
  5. 三毛別羆事件
    1. 事件概要
    2. 太田家への襲撃
    3. 明景家への襲撃
    4. 明景家包囲・突入
    5. 熊討伐
  6. 大化の改新
    1. 乙巳の変
    2. 入鹿暗殺の理由
    3. 矛盾する記録
    4. 大化の改新の目的
  7. 堀田正俊刺殺事件
    1. 御座の間大溜の刃傷事件
    2. 五代将軍綱吉の治世
    3. 大老・堀田正俊
    4. 側用人政治の誕生
  8. 元禄赤穂事件(忠臣蔵)
    1. 吉良邸討ち入り
    2. 松之大廊下刃傷事件
    3. 赤穂浪士たちの処分
    4. 世間の評判
  9. 木乃伊薬
    1. ミイラ薬のおこり
    2. 大流行したミイラ薬
  10. ひかりごけ事件
    1. 事件の発覚
    2. 矛盾する判決
    3. 小説の影響
  11. 北海道開拓時代の不法就労
    1. 酷使と暴力
    2. 搾取の構造
  12. 常紋トンネル
    1. 常紋トンネルの人柱工事
    2. 生き埋め
    3. 手紙
  13. 少年臀肉スープ
    1. 少年、薬屋、義兄殺し
    2. 人肉スープ
    3. 野口寧斎
  14. 鎖塚(北海道)
    1. 金子堅太郎
  15. 船橋の戦い
    1. 船橋の戦いと強姦
    2. 船橋の戦いの意味
    3. 戦闘の幕引き
  16. 箱館戦争
    1. 病院襲撃
    2. 函館戦争と高龍寺
    3. 傷心惨目の碑
  17. 天狗党始末記
    1. 点と線(桜田門外の変)
    2. 井伊直弼の評価
    3. 結成前夜
    4. 天狗党結成
    5. 結成そして行軍
    6. 処刑前拘束
    7. 和解
    8. 天狗党後記
      1. 形勢逆転
      2. 市川三左衛門の逆さ磔
  18. 会津戦争
    1. 会津鶴ヶ城の籠城戦
    2. 増えゆく死体
    3. 腐りゆく死体
    4. 遅すぎた埋葬
    5. 自決した白虎隊
  19. 戊辰戦争とカニバリズム
    1. 幕軍の人肉食
  20. 明治政府軍による幕軍いじめ
    1. 凄惨ないじめ殺し
  21. 首切浅右衛門
    1. 死体薬
    2. 人肝薬
    3. 日本刀の切れ味
  22. 三斗小屋の虐殺
    1. 虐げられた村人
  23. アイヌ哀史
    1. 開幕以前のアイヌ
    2. シャクシャインの戦い(1669)
    3. 敗北の辛酸
    4. 場所請負制度
  24. 佐渡金山の不法就労
    1. 犯罪者のたまり場
    2. 佐渡の変遷
  25. 江戸であった処刑や拷問
    1. 海老責めと釣り責め
    2. 拷問の背景
    3. 刑罰の変遷
  26. 村民が消えた村
    1. 騙された村人
    2. 開幕直後の水戸藩
    3. 事件の結末と現在の地名
  27. 独眼竜政宗の悪辣
    1. 反逆者への容赦なき虐殺
    2. 織田信長に憧れた麒麟児
  28. 秀吉と畜生塚
    1. 紅く染まった三条河原
    2. 秀吉の謀略
  29. 秀吉の兵糧攻め
    1. 三木の干し殺し
    2. 鳥取の渇(かつ)え殺し
  30. 荒木村重の逃亡
    1. 業深き大名・荒木村重
    2. 主君なき処刑
    3. 逃亡後の村重
  31. 浄土真宗本願寺の虐殺
    1. 信長の殲滅戦略
    2. 前田利家の活躍
  32. 比叡山延暦寺焼き討ち
    1. 信長の焼き討ち
    2. 信長比叡山焼き討ちの背景
    3. 中世の比叡山焼き討ち
  33. 織田家の家中騒動
    1. 信行謀殺
    2. 尾張国統一
  34. 武田信玄の信濃侵攻
    1. 首級三千
    2. 信州・佐久衆とは
    3. 上杉管領軍
  35. 延暦寺僧侶による根本中堂自焼
    1. 僧侶の焼身自殺
    2. 6代将軍・足利義教と延暦寺の不和
    3. 代表使節の斬首
    4. 足利義教の事後対応
  36. 源義経の嬰児を柴漬刑
    1. 頼朝の命により海へ沈められる
    2. 赤子を離さなかった静御前
    3. 遺恨を残せば平家の二の舞
  37. 一条天皇即位式に現れた生首
    1. 即位式の生首
    2. 藤原兼家による事件隠蔽
    3. 傀儡の一条天皇
  38. 土蜘蛛の討伐
    1. まつろわぬ民
    2. 源頼光と土蜘蛛
    3. 妖怪になった土蜘蛛
  39. 鸕野皇后の暗躍
    1. 大津皇子粛正
    2. 天皇の後継者
    3. 大津皇子
    4. 持統天皇即位
  40. 天武天皇の陰謀
    1. 十市皇女暗殺
    2. 吉野会盟
    3. 日本書紀編纂
  41. 壬申の乱
    1. 大海人皇子の謀略
    2. 天智天皇の謀略
    3. 志気高揚の策謀
  42. 飛鳥宗教戦争
    1. 大和朝廷と仏教
    2. 大和朝廷転覆説
    3. 大和朝廷転覆説への反論
  43. 首を狩られた大王
    1. 遺跡にのこる戦禍の疵痕
    2. クニが乱れた理由
    3. 初代天皇は誰
  44. 紅梅殿の祭礼費騒動
    1. 祭礼費用の強制徴収
    2. 紅梅殿の紛争が巻き起こる
    3. 悪党のレッテル張られ住人らは追放

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